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――あれはあれで、中野近辺で育った人たちとしての、共通するものがあったから、うまくいったのかもしれないしね。

あ、中野の血ね(笑)。それは筋少に入ってから、そういうのもあるんだなって思った。オレにとっての筋少は、ホントに同級生バンドだったね。ひとつの物の見方っていうか、見る角度はメンバー全員違っていて、青だっていうヤツもいれば、赤だって言うヤツもいてね。でも、育った時代が一緒だからね。ドリフが流行ったとかキッスが来日したとかね。そういう、同じ時代に生きた強みがあったね。

だから、アルバムとかライヴで、みんながそれぞれ思ったものをぶつけてみりゃいいじゃんっていうバンドになったんだよ。それで、出来上がったものを見たときに、オレたちも“なるほど、こうなったか”っていうのがあったし、見ている人にとっても独特のものになったんじゃないかな。

よく、外タレのインタビューなんかで、「ケミストリー(化学反応)」とかって言うけれど、オレたちほどめちゃくちゃな化学反応が起こって、うまくいったバンドは少ないと思うよ。まあ、うまくいかなかったら、アルバム1枚作って終わっていたのかもしれないけれどね。

――筋肉少女帯の橘高文彦というギタリストを確立するために、金髪のロング・ヘアーで、中世のヨーロッパぽい衣装に身を包んでっていうふうに、ヴィジュアル的にもひとつのスタイルを作っていったよね?

筋少っていうのが、ちょっとキャラクターのおもしろいバンドだっていうのもあったよね。ただ、筋少でいつも思っていたけど、ハード・ロック・へヴィ・メタルが本当に好きな人に、それを茶化しているように伝わるのが怖かったんだ。深夜のバラエティTV番組なんかをレギュラーで持っているようなバンドだったしさ。そこで、オレはメタルとかハード・ロックの人間なのに、そっち側から敵視されるようになるのが、すごく怖かったよ。

―-「ヘビメタさん」をやっていたときに、マーティ・フリードマンが同じことを言っていたよ。「日本のへヴィ・メタル・ファンは、ボクのことを敵だと思っていないかな?」ってね。

だから、自分がそういうものを本気で好きだっていう生き方を徹底しようと思ったのが先。だけど、キッスのステージ衣装が重くなったり、ステージ・セットが大掛かりになっていったのと一緒で、だんだん筋少の“ひとりメタル”である橘高が、時代とともにどんどんヘヴィ・メタル・キャラクターになっていったっていう自覚はあるよ。
たとえば、昔の暴走族が特攻服を着ていたら、自分がどういう人間かをアピールできるかのように、オレも自分がヘヴィ・メタルであるということをアピールしたかったわけよ。へヴィ・メタルの人だって、めったにそんなの着ないだろうっていう衣装とか着てさ。逆に、茶化しているように見えるかもしれなかったから、危険ではあったけれど、そこは実際に音を聴いてもらえれば、絶対に茶化していないっていうのがわかってもらえるだろうからね。茶化してギターを弾くことはできないからね。

当時は、へヴィ・メタル専門誌の「BURRN!」を読んでいるような人たちは、オレのことをどう思っているんだろうって考えていたよ。オレも、実際に「BURRN!」読者でもあるのに、みんなはオレのことをTVに出ている敵だと思っているのかなぁってね。

ただ、オレたちの世代って、ロック・バンドが怖がらずにTVに出るようになった世代だと思うんだ。まだ生演奏で、まだTVの音そのものが悪い時代だったけれど、オレたちなんて「ミュージック・ステーション」に出るにしても、最後のほうまで生演奏で出ていたからね。さすがに最後のほうは、どうしようもなくてカラオケになったりしたけれどね。
いま、そういうふうにTVに出ていたオレを見て、それがきっかけでギターを始めたっていう人がたくさんいてね。現在、プロで活動しているギタリストの人でも、「橘高さんを見てギターを始めたんですよ」って言ってくれる人がたくさんいるしね。そう考えると、あのころ、どこにでも出かけて行って、いろんなところに出たっていうのは、すごく良かったなぁって。

オレだって、キッスを見なかったら、ギター始めてなかったわけだから、“オレを見てギターを始めたっていう人が出てきたら、夢のようだな”って、オレも20代前半に思っていたんだけれど、そういう人がたくさんいてくれてさ。もしも、当時のオレが、へヴィ・メタルなんかを茶化していたようなギタリスト像だったら、それを見てギターを始めたような人たちが、いまプロになって活動するようにはならなかっただろうし。そういう意味では、ちゃんと伝わってくれたかなって思っているんだよね。

インタビュー収録日 2005年9月

Vol.3に続く
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